「脱温暖化社会構築」シンポ 参院選で議論を喚起

京都議定書の約束の年を目前にいよいよ国会も動き出すのでしょうか。
私が西岡秀三・国立環境研究所理事のお話を伺ったのは今から10年近く前のEVクラブのセミナーで、それは衝撃を受けたのを覚えています。

確かに世の中の意識は急速に変化しましたが、行動が伴うにはもう少しかかりそうな気がします。
そこをいかに早めるかは、なかなか難しくも感じます。

「脱温暖化社会構築」シンポ 参院選で議論を喚起1月19日8時0分
配信 産経新聞


 温室効果ガスの排出を抑制し、豊かで持続的な社会をめざす「脱温暖化社会の構築を目指して」と題するシンポジウムが今月17日、上智大学と産経新聞社の共催で開かれた。シンポジウムでは、脱温暖化社会実現のための条件を主要な議題に議論され、国民がメッセージを発して政治主導で政策を実現することが重要との考えが示された。また、来年の国会を「温暖化対策国会」と位置付け、議論を巻き起こすべきだとする提言が行われた。

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 シンポジウムは、三菱UFJ環境財団の寄付講座の一環として開催した。石澤良昭・上智大学長と鶴田東洋彦・産経新聞編集局次長兼経済部長が開会あいさつ、高祖敏明・上智学院理事長が閉会あいさつを行った。総合司会は大和田滝恵・同大地球環境大学院教授。大木浩元環境相、西岡秀三・国立環境研究所理事、柳下正治・同大院教授、環境ジャーナリストの土屋晴子氏、気仙英郎・産経新聞編集委員の4氏がパネリストを務めた。

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 ■動機付けが重要



 柳下氏は、「豊かさを求めて行動することが、温暖化社会の実現につながっていくことが大事。無理をしなくても、温暖化ガスが減る社会を実現しなければならない。そのための制度を作って、日本のあらゆるところに刺激をあたえるべきだ」と問題提起。その上で、「温暖化問題を今年の参院選の争点とし、2008年を温暖化国会と位置付けて、環境法制だけでなく、エネルギー関連法や都市計画法など法律すべてに脱温暖化の4文字を入れるよう法律を改正すべきだ」と提案した。

 大木氏は、英国を例に、「労働党、保守党が一体となって、石油や天然ガスなどの化石燃料の使用を減らす脱炭素社会の実現に向けて動き出している。マスコミも世論を引っ張っていく意識を持つべきだ」と同意した。

 これに対して、気仙氏は、「有権者が反応するかどうかは、参院選立候補者が、魅力ある温暖化対策を有権者に示せるかどうかにかかっている。努力することで得をするとか、地元商店街が活性化するとか、そういった優位性を有権者に提案できるかだ」と動機付けの必要性を強調した。

 柳下氏は「知恵を授けるのは民間の役割。国民が政治をプッシュしていかねばならない。そういった民間の集団の一つが大学だ」と政策の実行を国民が指示することが重要だとの意見を披露した。

 土屋氏は、「女性誌が年間企画として温暖化を取り上げるようになった。意識が変わってきている。二酸化炭素の排出量が少ない商品を買った方が得をするとか、安いとかのインセンティブが必要。社会が温暖化対策に努力する企業を応援するようなしくみにすることが大事だ」と先行する企業の実態報告を交えて提言した。

 一方、西岡氏は、「国民の意識が確実に変わってきている。産業界は、低炭素社会実現に向けて最新技術の開発に力を入れている。中国でも排ガス規制は厳しい。まず、国が明快なシグナルを出すことが動機付けにつながる」と制度設計が重要との考えを示した。

 温室効果ガスの削減目標を定めた京都議定書の目標期間が2012年に終わる。その後の温暖化対策に向けた具体的な対策については、大木氏が「脱炭素社会に向けて太陽光や風力、バイオマスなどの自然エネルギー開発に視点を置くべきだ」と発言。西岡氏は、「温暖化問題は、次の世代につなぐ革新(イノベーション)の原点だと確信している」と新技術開発が脱温暖化社会構築の主軸であることを強調し同日の議論を総括した。

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 ■日本の対策、周回遅れ

 わが国は、地球温暖化防止のため京都議定書で、1990年比で6%の温室効果ガスの削減目標を決めて努力しているが、日本は1周遅れという感じだ。環境省は、「さまざまな対策をやっている」といっているが、温室ガスの排出量は1990年レベルよりも増加している。

 米国は、京都議定書を離脱したが、各州レベルで削減努力をしている。例えば、カリフォルニア州のシュワルツェネッガー知事は、昨年、温室効果ガスの削減を義務づける法案に署名し、州レベルでの削減法を成立させた。全米の約半分の州は、京都議定書に賛成している。英国は、世界銀行の元チーフエコノミストのニコラス・スターン氏がまとめたリポートにもとづいて、労働党、保守党が一体となって取り組んでいる。それは、「もし、2050年までに真剣な温室効果ガス削減対策を行わないと世界規模で国内総生産(GDP)が5~20%減少する損害が出るが、早急に対策を始めれば、温室効果ガスの排出を安定させるコストは1%で済む」という内容だ。日本は、各省庁ごとにやっているが縦割り行政の弊害でまとまっていない。

 (大木浩・元環境相)

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 ■予測上回る変化が問題

 地球は二度と繰り返せない実験をやっているようなものだ。これまでの気候研究などで気候変動が予想されていたが、北極海の氷の融解、グリーンランドや南極氷床の融解、干魃(かんばつ)、熱波、豪雨の頻発による被害が顕在化しつつある。問題なのは、その予測が思ったよりも早く、思った通りの変化が起きていることだ。原因は、人為起源の温室効果ガスによる可能性が大だ。

 いま、やるべきことは何か。それは、危険なレベルになる前に排出量を減らすことだ。具体的には大気中の温室効果ガスの濃度を475ppm以下にして、気温の上昇を2度以下に抑えなければならない。2050年に温室効果ガスの排出量を世界全体で1990年レベルの50%以下に削減する必要がある。日本はそれ以上の85%から90%の削減を求められる可能性が高い。欧州はこの線で目標を定めているし、中国なども低炭素社会の模索を始めている。成り行きまかせでは、不可逆的な状態まで気候変動が進行する。温室効果ガスの抑制は可能。国の内外で目標を定めて早期対応をすべきだ。(西岡秀三・国立環境研究所理事)

最終更新:1月19日8時0分


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