<CO2>南大洋は吸収ゼロ 温暖化対策急務に 8カ国調査
5月18日3時8分配信 毎日新聞
二酸化炭素(CO2)の吸収源と考えられてきた南大洋(南緯45度以南)が、最近はほとんど吸収していないとみられることが日本など8カ国の国際研究チームの分析で分かった。人間活動により強まった風が、地球規模で大気や海洋の循環を変化させ大気から海洋へのCO2吸収を妨げているという。大気中のCO2濃度は予想より高まる恐れがあり、地球温暖化対策としてCO2排出削減策の強化が求められそうだ。18日付の米科学誌サイエンス(電子版)で発表する。
米国などが1960年前後から実施した観測から、南大洋は海洋全体の約30%に当たる年間約6億トンのCO2を吸収しているとされた。ところがコンピューターにより吸収量がその半分程度と試算され、正確な評価が求められていた。
国際研究チームは、81~04年に南極・昭和基地など南大洋に囲まれた11地点を含む世界40地点で精密に測定された大気中のCO2濃度を解析。その結果、南大洋のCO2吸収力は、平均して年間約800万トンずつ弱まり、現在ではほとんど吸収していないという。
この現象は、▽温暖化やオゾン層破壊による気温変化で南大洋での風が強まった▽それによって海の循環が変化し、CO2濃度が高く吸収する余力が乏しい深海の海水が上昇、海表面付近に広がった――と想定すると、説明できるという。
研究チームの中澤高清・東北大教授(気象学)は「南大洋が吸収から放出に転じる可能性がある。海がCO2を吸収する前提で進められている温暖化対策を見直す必要が出てくるのではないか」と話している。【田中泰義】
最終更新:5月18日3時8分