温暖化対策“切り札”エタノール 米で効果に「?」

自動車の温暖化対策として注目を集めるエタノールも、一方では大きな問題をはらんでいる。
食べ物を犠牲にしてまで自動車?

温暖化対策“切り札”エタノール 米で効果に「?」3月28日8時0分配信 産経新聞


 【ワシントン=渡辺浩生】ガソリンの年間消費量を10年間で20%削減する目標を掲げたブッシュ米大統領は26日、ビッグスリー(米3大自動車メーカー)首脳と会談し、代替燃料バイオ・エタノールの普及拡大に努める考えで一致した。しかし、原料となるトウモロコシの価格が高騰。エタノールが普及しても温室効果ガスの削減効果は限定的という見方も出るなど、石油依存体質からの脱却と地球温暖化対策の“切り札”に早くも疑問が噴出している。

 「ガソリン消費を減らす技術的突破口だ」。ビッグスリー首脳と会談後、ホワイトハウスの庭に並んだ代替燃料車を前に、ブッシュ大統領はこうアピールした。

 エタノールなどの代替燃料は、1月の一般教書演説で大統領が打ち出したガソリン消費削減目標実現のカギを握り、年350億ガロンの供給が必要となる。ビッグスリーは2012年までに生産台数の半数を代替燃料車にする考えだ。

 しかし、米再生可能燃料協会によると、トウモロコシ原料のエタノール生産は現在建設中のプラントが完成しても年114億ガロン程度が限界。トウモロコシ全生産を投入しても、ガソリン消費を12%減らすだけだ。「農家が小麦など他の作物からトウモロコシ生産に次々と切り替えている」と米農務省エネルギー政策局のハリー・バウマス副局長。「エタノール・インフレ」とも呼ぶべき物価上昇を招いている。

 米労働省によると昨年12月から今年2月までの食料・飲料水価格は年率換算で5・9%上昇。卵や牛乳、肉の価格上昇が著しいのは、飼料価格高騰によるものだ。

 農地需要も増し、米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、トウモロコシ生産が集中する中西部のアイオワ州では昨年、農地価格が10%、イリノイ州北西部では17%も上昇した。

 そんな中、25日付のワシントン・ポスト紙は「トウモロコシはわれわれの問題を解決しない」という論文を掲載した。

 トウモロコシを原料にしたエタノールは、生産過程で大量の化石燃料を使用するため、新エネルギー創出は1ガロン当たり20%にとどまる。温室効果ガスの排出量も同量のガソリンを消費した場合より15%少ないだけだ。トウモロコシ原料よりも効率性が優れたブラジル産のサトウキビ原料エタノールも、増産で熱帯雨林が伐採されれば、結果として二酸化炭素排出量の増大を招くという。

 論文を執筆したミネソタ大のデイビッド・ティルマン教授は産経新聞の取材に「エタノールが化石燃料より大気によいとはかぎらない。原料によって効果も異なる。食料供給や環境持続性と両立できる最適なエタノール政策を検討すべきだ」と警鐘を鳴らしている。

最終更新:3月30日2時30分


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