バイオガソリンの販売開始/新エネルギー点火に課題

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バイオガソリンの販売開始/新エネルギー点火に課題

 地球温暖化対策として石油元売り各社が導入を進めている「バイオガソリン」の試験販売が二十七日、首都圏で始まる。京都議定書の二酸化炭素(CO2)排出量の削減目標もにらみ、普及に期待がかかる。しかし、主導権をめぐる省庁間の対立は続いたまま。原料の確保や価格の見通しも不透明で、新エネルギーとして本格的に点火するためには課題が残っている。

 ▽あいさつに含み

 「面白おかしく言われているが、われわれの真摯(しんし)な姿勢を裏打ちしたもの。自信を持って世の中に出す」。二十六日午前八時、横浜市の製油所で行われたバイオガソリン出荷式。あいさつした石油連盟の渡文明会長(新日本石油会長)は、含みのある言葉を投げた。

 背景にあるのは省庁間の対立だ。石油業界は、バイオエタノールが水と混じりやすいとして、石油製品と合成した加工品「ETBE」にして混ぜる方式を採用。欧州では一般的で、経済産業省も後押しする。ただ、他の物質も含まれるため、バイオエタノールの比率を上げるには限界がある。

 京都議定書に基づき政府は、二〇一〇年にバイオ燃料を自動車などに年五十万キロリットル導入する計画。環境省は「ETBEだけでは量が足りない」とし、バイオエタノールを直接混ぜ、比率も増やしやすい製法を採用した。米国などでは主流で、八月から大阪府などで販売を始める方針だ。しかし、石油連盟が協力を拒否、肝心のガソリンの供給元が決まっていない。

 ▽乱れる足並み

 環境対策と農業振興の両立をもくろむ農水省も意欲的だ。現在わずか年三十キロリットルの国産バイオエタノールの生産量を三〇年までに六百万キロリットルに引き上げるとして、大増産計画に取り組む。二十三日には北海道の農業団体がテンサイを使ったエタノール工場建設への補助金に応募を決め、同省は「大手商社もプラント建設のノウハウ獲得に関心を寄せている」と、滑り出しは順調とする。

 将来的には稲わらや間伐材など、農林業の副産物を原料に活用する考え。休耕田や耕作放棄地に燃料用水稲を作れば、耕地の減少に歯止めをかけ、新たな農業も展開できるという戦略だ。同省幹部は「水田を維持でき、緊急時には食用に転用できる」といい、食料の安全保障にも役立つ「一石三鳥」の効果を狙う。

 これに対し、経産省は「バイオ燃料が農産物振興策に使われる」と警戒を隠さない。年六百万キロリットルとの生産目標も「(政府の)工程表に含まれていない」(甘利明経産相)として、実現を疑問視。水稲の利用も「食料問題が生じる」(北畑隆生経産事務次官)ため、廃材などセルロース素材の活用研究が重要と反論、足並みは乱れたままだ。

 ▽メーカーも注文

 ユーザーとなる自動車業界には苦い記憶もある。二〇〇〇年前後、低価格の高濃度アルコール燃料を入れた車が火災事故を起こし、原因をめぐり燃料販売会社と自動車メーカーが大論争をしたのだ。新エネルギーのトラブルで真っ先にクレームを受ける立場だけに、「きちんとした品質管理が必要」(自動車メーカー幹部)と注文をつける。

 普及の鍵を握る価格の行方も未知数だ。レギュラーガソリンとの差額分を石油連盟と経産省が折半で負担、バイオガソリンを同一価格で販売する計画。しかし、補助期間は二年と限られており、以後の対応は決まっていない。原料を輸入に頼らざるを得ないだけに、各国の需要が増えれば販売価格の上昇も懸念される。

2007年4月26日(木)


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